PFASは、全国各地で水環境や飲み水への影響が問題となっている有機フッ素化合物の総称です。代表的なものにPFOS、PFOAがあり、日本ではこれらの合算値について、飲み水や公共用水域・地下水で暫定目標値が設けられています。

茨城県内でも、河川水、地下水、飲用井戸、専用水道、事業所地下水などから、PFOS・PFOAの暫定目標値を超える事例が確認されています。特に、井戸水を飲用に使っている地域では、住民の生活に直接関わる問題です。

霞ヶ浦アカデミーは、霞ヶ浦・北浦をはじめとする茨城の水環境に関心を持ち、学び、伝える活動を続けてきました。このページでは、県内で公表されているPFASの情報を整理し、市民が事実を確認し、地域の水環境について考えるための資料として公開します。

このページは、不安をあおるためのものではありません。どこで、どのような水から、どの程度の濃度が確認されているのかを整理し、必要な調査、情報公開、飲用井戸利用者への支援、継続的な監視について考えるための出発点です。

PFASとは

PFASとは、有機フッ素化合物の総称です。水や油をはじく性質があるため、泡消火剤、撥水・撥油加工、工業用途などに使われてきました。

PFASの中でも、PFOSやPFOAは環境中で分解されにくく、地下水や河川を通じて広がることがあります。そのため「永遠の化学物質」と呼ばれることもあります。

PFASは、飲み水や食品などを通じて体内に取り込まれる可能性があり、一部のPFASについては、長期的な曝露により、脂質代謝、免疫、肝機能、出生時体重、腎臓がん・精巣がんなどとの関連が指摘されています。ただし、個人の病気とPFASとの因果関係をただちに判断することは難しく、継続的な調査と健康影響に関する知見の蓄積が必要です。

日本では、PFOSとPFOAの合算値について、飲み水や公共用水域・地下水で50ng/Lという暫定目標値が用いられてきました。本ページでは、この50ng/Lを超えた県内の公表事例を中心に整理します。

暫定目標値とは

暫定目標値とは、国が当面の管理目安として定めている値です。日本では、PFASのうちPFOSとPFOAについて、合算で50ng/L以下という暫定目標値が用いられています。

「検出された」ことと「暫定目標値を超えた」ことは同じではありません。低い濃度で検出されても、50ng/L以下であれば日本の暫定目標値の範囲内です。一方で、50ng/Lを超えた場合には、飲用の有無や周辺への広がりを確認し、必要に応じて追加調査や飲用中止、代替水の確保などの対応が求められます。

なお、海外では米国EPAがPFOS・PFOAそれぞれ4ng/L、EUが複数のPFASを対象にした基準を設けています。国や地域によって対象物質や制度は異なりますが、日本の50ng/Lという値を考える際には、こうした海外基準との比較も重要です。

国・地域対象
日本PFOS+PFOA50ng/L
米国EPAPFOA4ng/L
米国EPAPFOS4ng/L
EU20種類のPFAS合計100ng/L
EUPFAS全体500ng/L

茨城県内で暫定目標値を超えた場所

茨城県内では、これまでに河川水、地下水、飲用井戸、専用水道、事業所地下水などで、PFOS・PFOAの暫定目標値を超える事例が公表されています。

超過が確認されている主な地域は、鉾田市、小美玉市、茨城町、水戸市、神栖市、つくば市、筑西市、北茨城市などです。特に、鉾田市・小美玉市・茨城町周辺では、飲用等井戸の調査で複数の超過が確認されています。

区分市町村・地域地点・内容濃度採水日・検査日など
河川水鉾田市周辺梶無川・上宿橋54ng/L2021年度
河川水鉾田市鉾田川・旭橋100ng/L2022年度
河川水鉾田市鉾田川・旭橋69ng/L2023年度
河川水茨城町・大洗町方面大谷川・大谷橋110ng/L2024年度
地下水神栖市溝口観測用井戸、飲用なし210ng/L2021年度
地下水水戸市備前町県の地下水調査58ng/L2024年度
飲用井戸鉾田市 徳宿・大戸・造谷など1回目調査県270〜770、市97〜550ng/Lなど2025年1月公表
飲用井戸鉾田市 徳宿・大戸・造谷周辺2回目調査最大930ng/L2025年2月公表
飲用井戸鉾田市 徳宿・大戸・造谷周辺3回目調査最大1,200ng/L2025年3月11日採水
飲用井戸鉾田市4回目調査最大750ng/L2025年5月1日採水
飲用井戸鉾田市5回目調査最大1,300ng/L2025年5月14・15日採水
飲用等井戸鉾田市6回目調査最大1,300ng/L2025年6月26・27日、7月10日採水
飲用等井戸小美玉市6回目調査最大4,100ng/L2025年6月26・27日、7月10日採水
飲用等井戸茨城町6回目調査610〜680ng/L2025年6月26・27日、7月10日採水
飲用等井戸鉾田市7回目調査最大860ng/L2025年8月26・27日、9月2・9日採水
飲用等井戸小美玉市7回目調査最大300ng/L2025年8月26・27日、9月2・9日採水
飲用等井戸茨城町7回目調査最大1,300ng/L2025年8月26・27日、9月2・9日採水
飲用等井戸鉾田市8回目調査最大230ng/L2025年11月14・18日採水
飲用等井戸小美玉市8回目調査最大110ng/L2025年11月14・18日採水
飲用等井戸茨城町8回目調査240ng/L2025年11月14・18日採水
飲用井戸水戸市五軒町飲用井戸1か所90ng/L2025年3月公表
飲用井戸水戸市大場町飲用井戸1か所190ng/L2026年2月公表
専用水道つくば市事業所の飲用井戸、原水・給水栓水原水145ng/L、給水栓水105ng/L県取りまとめ2024年9月
専用水道筑西市門井事業所の地下水を水源とする専用水道給水栓水65ng/L県取りまとめ2024年9月
井戸水筑西市門井周辺周辺井戸7か所中4か所超過数値範囲未確認2024年度以降の周辺調査
井戸水筑西市茂田事業所井戸2か所72ng/L、78ng/L2026年3月公表
事業所地下水北茨城市磯原町上相田事業所内井戸19井戸中18井戸超過32〜64,000ng/L2024年12月〜2025年4月調査
井戸水牛久市久野町茨城農芸学院の井戸水PFOA 59ng/L、PFOS不検出2025年1月公表

地域別のポイント

鉾田市・小美玉市・茨城町周辺

鉾田市周辺では、河川水である梶無川・鉾田川で過去に暫定目標値を超える値が確認されています。また、飲用等井戸の調査では、鉾田市に加え、小美玉市、茨城町でも超過が確認されており、特に小美玉市では最大4,100ng/L、茨城町では最大1,300ng/Lの値が公表されています。

この地域では、河川水と地下水・井戸水の関係、汚染範囲の広がり、飲用井戸利用者への支援が重要な論点です。

水戸市

水戸市では、県の地下水調査で備前町地内から58ng/Lが確認されたほか、五軒町、大場町の飲用井戸でも暫定目標値を超える値が公表されています。飲用井戸の場合、住民の飲み水に直接関わるため、周辺調査や飲用中止の周知、代替水の確保が重要です。

つくば市・筑西市

つくば市と筑西市では、一般の上水道ではなく、事業所等の専用水道で暫定目標値を超える値が確認されています。専用水道は、施設や事業所などで利用される水道であり、利用者に検査結果が適切に伝わることが重要です。

筑西市では、専用水道に加えて、周辺井戸や事業所井戸でも超過が公表されています。

北茨城市

北茨城市磯原町上相田では、事業所内の地下水から非常に高い濃度のPFOS・PFOAが確認されています。最大値は64,000ng/Lと公表されており、県内でも特に高い値です。

事業所内地下水の問題は、原因究明、敷地外への拡散の有無、周辺環境への影響確認が重要になります。

神栖市

神栖市溝口では、県の地下水調査で210ng/Lが確認されています。観測用井戸であり飲用はないとされていますが、地下水中で暫定目標値を超える値が確認された事例として記録されています。

水道関係でPFOS・PFOA合算8ng/L以上

茨城県の上水道42事業者については暫定目標値50ng/Lの超過はない一方、上水道の最大値は筑西市31ng/L、行方市30ng/L、小美玉市21ng/Lなどとされています。専用水道では、つくば市145ng/L、筑西市65ng/Lの2件が50ng/Lを超過しています。

一方で、米国EPAは飲料水について、PFOSとPFOAをそれぞれ4ng/Lとする基準を設けています。県の資料ではPFOS・PFOAの合算値で示されているため、米国基準を厳密に判定するには個別値の確認が必要です。ただし、PFOS・PFOAの合算値が8ng/L以上であれば、少なくともどちらか一方は4ng/L以上となります。

そこで本項では、日本の暫定目標値50ng/Lを超えた地点とは別に、参考として、PFOS・PFOA合算で8ng/L以上となった水道関係の地点もリスト化しました。これは、米国EPA基準を参考にした場合に注意が必要と考えられる水準を把握するための整理です。なお、合算8ng/L未満でもPFOSまたはPFOAの一方が4ng/Lを超える場合があるため、この一覧は米国基準超過地点を完全に網羅するものではありません。

区分事業者・市町村等検出結果検出年度・備考
水道用水供給事業鹿行広域水道用水供給事業13ng/L2021年度。2024年度4〜8月の最大値は3ng/L
水道用水供給事業県南西広域水道用水供給事業10ng/L2023年度。2024年度4〜8月の最大値は8ng/L
上水道古河市10ng/L2024年
上水道常陸太田市12ng/L2023年
上水道筑西市31ng/L2022年。全9浄水場で測定。うち1浄水場で31ng/L、直近2024年度は18ng/L、他8浄水場は不検出〜19ng/L
上水道稲敷市12ng/L2024年
上水道桜川市17ng/L2024年
上水道行方市30ng/L2024年。全6浄水場で測定。うち1浄水場で30ng/L、他5浄水場は不検出〜11ng/L
上水道小美玉市21ng/L2024年
上水道茨城町8ng/L2020年
上水道大洗町11ng/L2024年。町内2か所にて測定
専用水道つくば市内専用水道原水145ng/L、給水栓水105ng/L事業所の飲用井戸。近隣井戸半径500m以内の2地点は暫定目標値以下
専用水道筑西市内専用水道給水栓水65ng/L事業所の飲用井戸。検出後、市の上水道へ切替え済み

市民として確認したいこと

PFAS問題では、一度の検査で終わらせるのではなく、継続的に調査し、濃度の変化や汚染範囲の広がりを確認することが必要です。

霞ヶ浦アカデミーでは、県内で公表されている情報を整理しながら、次の点が重要だと考えます。

  • 採水日、地点、媒体、濃度、対応状況を分かりやすく公表すること
  • 飲用井戸利用者への周知、代替水、検査費用支援を進めること
  • 暫定目標値を超えた井戸水を飲用していた方に対し、希望に応じて血液検査や健康相談を受けられる体制を整えること
  • 超過地点周辺の地下水・河川水・井戸水調査を継続すること
  • 現在主に調査対象となっているPFOS・PFOAだけでなく、PFHxSなど他のPFASについても調査対象を広げること
  • 原因究明と、必要に応じた拡散防止対策を行うこと
  • 水道水の基準について、米国や欧州など海外の動向も踏まえ、より厳格な水準への見直しを検討すること
  • 霞ヶ浦・北浦を含む流域全体の水環境として、長期的に監視すること

PFASは、飲み水、地下水、河川水、事業所排水、流域の水循環が関わる問題です。特に井戸水を飲用していた方にとっては、環境中の濃度だけでなく、自分の体にどの程度取り込まれていたのかを知ることも重要です。

そのため、行政には、調査結果の公表にとどまらず、住民への説明、健康不安への対応、血液検査や相談体制の整備、原因究明、継続的な監視を一体的に進めることが求められます。

井戸水を使っている方へ:相談先

PFASが暫定目標値を超えて確認された地域では、井戸水を飲用に使っている方への周知、代替水の確保、水質検査、上水道への接続などが重要になります。

井戸水を飲用に使っている方や、自宅・事業所の水が心配な方は、まずはお住まいの市町村の環境担当課、または茨城県の担当課に相談することが考えられます。

対象地域まず確認する先電話番号
茨城県全体茨城県 県民生活環境部 環境対策課 水環境室029-301-2966
鉾田市鉾田市 環境経済部 生活環境課0291-33-2111
小美玉市小美玉市 市民生活部 環境課0299-48-1111
茨城町茨城町 生活経済部 みどり環境課029-240-7135
大洗町大洗町 生活環境課 生活環境係029-267-5111
水戸市水戸市 環境保全課 公害係029-232-9154
筑西市筑西市 市民環境部 環境課0296-24-2130
北茨城市北茨城市 生活環境課0293-43-1111

参考資料